『シネマでヒーロー[監督編]』、武藤起一編、ちくま文庫、一九九六

当時の新進気鋭の邦画映画監督のインタビュー集。
この文庫の元となった、『映画愛 監督編』では、黒沢清、小松隆志、天願大介山本政志林海象のインタビューも収録されている。

竹中直人の父は役所勤務、共産党を支持し、労働組合の委員長もやっていた。
人とのコミュニケーションのとり方がわからず、気に入った人の真似ばかりしていた。

押井守と同じく、周防正行の父親も国鉄職員。
『変態家族・兄貴の嫁さん』を撮り、初号試写に蓮実重彦に手紙を出して招待する。
これが大絶賛され、『マルサの女』のメイキング監督に抜擢される。

周防 いや、僕は意見がぶつかった場合には編集マンの意見に従いますよ。
僕はそんな、自分が撮ったものに対するこだわりっていうのが、ほとんどないんですよ。
なぜかというと、これは最初から人に伝えようと思って撮っているわけですから。
それが伝わらないって言われたら、僕には根拠がないんですよ。

塚本晋也日芸卒)
CFなどのプロダクション会社に勤めていた。
ラトーヤ・ジャクソンニコンピカイチのCFを撮ったが、
いまひとつ面白くない出来だったため、すっぱりとやめて芝居のほうへ。

それにしても、松岡錠司の西村むつみの話は痛々しい。
これは「愛」というよりも「業」の世界です…。

こういう、現在第一線の監督の駆け出しの頃の話は面白いな〜。
そうそう、難波のツタヤのレンタル落ちコーナーで、
黒沢清の『神田川淫乱戦争』と井筒和幸の『暴行魔 真珠責め』を手に入れた。
これは掘り出し物だった!
やはり面倒くさがらずにパトロールは続けるものです。


シネマでヒーロー 監督篇―武藤起一インタヴュー集 (ちくま文庫)

シネマでヒーロー 監督篇―武藤起一インタヴュー集 (ちくま文庫)