最近観た映画。 ②

(昨日の続き)


・『ホネツギマン』

低迷感が拭えない、コーエン兄弟、弟のイーサン脚本による作品。

コーエン兄弟の弟、イーサン・コーエンが
脚本を手掛けた異色の格闘コメディ。
昼は整体師、夜は無敗のプロレスラー
“ホネツギマン”として活躍するエドワード。
ある事件から、両親と愛する妻を殺された彼は、
ボディスーツを身にまとい復讐を開始する。

復讐の炎を燃やす正義のカルトヒーロー
“ホネツギマン”の活躍を描いた作品。
「オー・ブラザー」「ファーゴ」のイーサン・コーエン
脚本で参加している。

以上はアマゾンの紹介ページより。


いや、『OH! ブラザー!』、『バーバー』は面白かったよ。
面白かったし、いよいよコーエンワールドが確立されてきたようにも思うけど、
この頃からぼくはコーエン兄弟から心が離れていった。
コーエン兄弟作品は、普通にそのまま観てもまあ楽しめるけど、
実は恐ろしく引用に満ちた映画だったりする。
過去のフィルム・ノワールへの引用、ハード・ボイルド小説への目配せ、
ヒッチコックトリュフォー的な映画技法への挑戦……
批評家たちは恐らくコーエン兄弟のこういうところを評価してるんだろう
(『未来は今』のオフィスは『未来世紀ブラジル』で、
物語は『素晴らしき哉、人生!』だ! とかね)。
そういうヲタク的な楽しみを別にすれば、
彼らの笑いは基本的にオフ・ビートなもので、
腹を抱えるほど面白いっていうものじゃない。
だから、意地の悪い言い方をするなら、
新作を発表すると皆大騒ぎするけど、そこまで面白いかな、
という気がするんだよね。
みんな、コーエン兄弟がいろいろ賞もらってるから
ちょっとありがたがってるんじゃないの? なんて。
引用元なんて、ぼくは半分もわからない。
*1


それはそれでいいとしよう。
昔のコーエン兄弟は、
確かに人生の急所に触れるような素晴らしい映画を撮っていた。
バートン・フィンク』は
現実と虚構の境目を映像的に巧みに表現しながら
作家の苦悩を描き出すことに成功していたし、
『ファーゴ』は人生のアイロニー・哀しさ・希望を
実に繊細な手付きで描いていると思う。
『ブラッドシンプル』のクールさは言うに及ばず。


ところが、最近のコーエン兄弟は、
引用の海に溺れること映像的な美を構築することに力を注ぎ、
人間の繊細な部分を描く、ということが視野に入っていないように感じるのだ。
なんというか、どんどん映画ヲタクが喜ぶような作風になっているというか。
そういうのって、ぼくはあまり興味ないんだよな。
キル・ビル』も楽しめなかったし。


長々と『ホネツギマン』というよりもコーエン兄弟について書いたけど、
『ホネツギマン』自体は面白かった。
ただ、これもストーリーは荒唐無稽。
このフィルムの面白さはB級映画好きが喜ぶような面白さです。
だから多分この映画もファンには好意的に受け止められると思うけど、
どうもコーエン兄弟
袋小路に入り込んでしまっているような気がしてならない。


ディボース・ショウ』や『バッド・サンタ』を
まだ観てないのはそのためだ。
先送りしていてはいけない、とは思うのだが、
まだ観る勇気を持てずにいる。

最近観た映画について書くつもりが、
コーエン兄弟について書いてしまった。
続きは明日書く。

あと、今日は『エミリー・ローズ』を観たけど、
エクソシスト』と対比して観ると、これが実に面白い。

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*1:で、後でパンフとかみて知るわけだ。これも映画の楽しみ方のひとつだとは思うけどね…。