『ハワイで大の字』、小栗左多里/トニー・ラズロ、ソニー・マガジンズ、2005

おなじみ、左多里さんのルポ漫画。
今回はハワイに長期滞在していたときのもの。
いつもながらのノリでつまらなくはないんだけどさ…。
なんか物足りないんだよな。


なぜ、最近の左多里さんの漫画をぼくは物足りなく思うのか?
その理由を考えてみて、あることに気が付いた。
それは、政治的な要素がないこと。
ハワイに長期滞在していて、この2人は何も感じなかったのだろうか?
ただ、のんびりとタロ芋やパラセールを楽しんだだけだったのか?
いや、そんなはずはないだろう。
特にトニーはそういうところに敏感なはずだ。
そうでなければ、トニーは単に語学オタクで内向的な草食動物だ。


別にぼくは声高に政治的な主張を展開せよ、とけしかけているのではない。
ただ、あまりにこの2人の視点がトリビア的で、
新婚旅行的な視点であることにうんざりしただけだ。
思うに、これには編集者の意図が加味されているのではないか。
――変に重苦しい内容を導入する必要はない、
適当にこの二人の現地での生活を漫画にすれば売れるのだから――
というような。

さらっと読めるけど、それで終わってしまう。
ダーリンは外国人』が面白かったのは、
あれが一見軽い日常生活漫画のように見えて、
実は「他者との生活」という、
もっとも基本的な次元での政治の話だったからではないか。
そして、左多里さんの眼差しはトニーへの愛に満ちている。
あの密度に比べると、やはりこの漫画は少々弛緩している。
次こそ! 次こそ期待しています…。