『国家の品格』が売れているようだ。
まったく腹立たしいことだ。
先日も、平積みになっていたこの本を5〜6冊手にして、
誰に配ろうか相談している老夫婦を近くの書店で見かけた。
なんであんな本が売れるのかねえ……。
読み書きをしっかり勉強しろ、「美」の感覚を忘れるな、
日本人は繊細な感性を持っているすばらしい民族だ――
まあ、実は一つ一つの主張にはぼくもそれほど反論はない。
問題は、その主張の根拠となる議論があまりにも粗雑なこと、
そして全体として浮かび上がってくる思想が
二流の右寄りなものだからだ。
……なんてことをまた話していたら、
ぼくの立腹ぶりを心配したのか、連れがこの本を持ってきてくれた。
で、やっと時間が取れたので読んだんだけど、
この本は悪くなかった。
1時間で読めちゃう本で、
内容も藤原正彦がこれまで色々なところで
話したり書いてきたことの繰り返しなんだけど、
対談ということもあってかテンポよく進み、
数学史の面白いところをつまみ食いできる。
こういうのを続けてくれればよかったのにな、藤原正彦は。
何かというと妻の話を出しておどけてみせるのには
いい加減辟易してくるけど
(お前は刑事コロンボか! と突っ込みたくなります)、
数学の話はやはり面白い。
芸として、向き不向きというものがある。
日本がどうこうという話はもういいんじゃないですか。
向いてませんよ、藤原さんには。
または、そういう話をするのなら、
もう少し納得できる論理を話してください。
……と、思ってたら、性懲りもなくまたそういう話してるんだよね。
あーあ。
- 作者: 藤原正彦,小川洋子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/04/06
- メディア: 新書
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