『世にも美しい数学入門』、藤原正彦/小川洋子、ちくまプリマー新書、2005

国家の品格』が売れているようだ。
まったく腹立たしいことだ。
先日も、平積みになっていたこの本を5〜6冊手にして、
誰に配ろうか相談している老夫婦を近くの書店で見かけた。
なんであんな本が売れるのかねえ……。
読み書きをしっかり勉強しろ、「美」の感覚を忘れるな、
日本人は繊細な感性を持っているすばらしい民族だ――
まあ、実は一つ一つの主張にはぼくもそれほど反論はない。
問題は、その主張の根拠となる議論があまりにも粗雑なこと、
そして全体として浮かび上がってくる思想が
二流の右寄りなものだからだ。


……なんてことをまた話していたら、
ぼくの立腹ぶりを心配したのか、連れがこの本を持ってきてくれた。
で、やっと時間が取れたので読んだんだけど、
この本は悪くなかった。
1時間で読めちゃう本で、
内容も藤原正彦がこれまで色々なところで
話したり書いてきたことの繰り返しなんだけど、
対談ということもあってかテンポよく進み、
数学史の面白いところをつまみ食いできる。


こういうのを続けてくれればよかったのにな、藤原正彦は。
何かというと妻の話を出しておどけてみせるのには
いい加減辟易してくるけど
(お前は刑事コロンボか! と突っ込みたくなります)、
数学の話はやはり面白い。


芸として、向き不向きというものがある。
日本がどうこうという話はもういいんじゃないですか。
向いてませんよ、藤原さんには。
または、そういう話をするのなら、
もう少し納得できる論理を話してください。
……と、思ってたら、性懲りもなくまたそういう話してるんだよね。
あーあ。


世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)