『キラーストリート』、サザンオールスターズ、2005年

実に7年ぶりのサザンの新譜!
『Young Love』、『さくら』はスゴかった…。
サザンは中学時代、ということは15年ほど前から聴いていたが、
ファンとしてではなく、客観的に聴いてもこの2枚は名盤。


何語かわからないラップ*1を交え、
J-RAPの「俺様節」を一蹴するライムに満ちた「愛の言霊」など、
ある種の凄みを感じさせる曲を含みながら「心を込めて花束を」まで、
勢いを失わずに疾走する『Young Love』、
そして何といっても『さくら』!
これは歴史的名盤といってしまってもいいだろう。
1曲1曲のクォリティを失わず、
しかもトータル・アルバムとして
恐ろしいほどの完成度を実現したこのアルバムは、
サザンというバンドが一つ違う次元に到達したことを示している。
発売当時、ぼくはサザンのこの成熟振りをレッチリのそれと並べたものだ。
いまでも「YARLEN SHUFFLE」を聴くと気が遠くなります。
桑田自身、「「TSUNAMI」があれだけ売れて、
『さくら』が全く売れないのには腹が立つ」とどこかで言ってたけど、
その気持ちはよくわかる。
TSUNAMI」なんて、大して苦労せずに書いてしまった雰囲気あるもんね。


だから、この『キラーストリート』は大いに期待していた。
と同時に怖くもあった。
何しろ『さくら』が歴史的名盤だったからだ。


で、肝心の内容なんだけど……。
うん、大きく期待は裏切られなかった。
いつもながらのサザンで、安定して2枚とも聴ける。
しかし、どこか物足りないのも事実。


骨太のロックだけど、取り入れられるものはどんどん取り込んでいこう
とする音楽的な探究心も窺える。
大まかな印象は、ボブ・ディラントッド・ラングレン
アル・クーパーみたいな、キャリアを積んだベテランが
70年代に発表した2枚組のアルバムみたいな印象。
どれももちろん素晴らしいんだけど、強烈な印象は残さないというか。

曲はバラエティに富んでいるけど、
裏を返せば寄せ集めのように聞こえてしまうのも事実。
また、いつもながらの安定したサザンのサウンドなんだけど、
これも裏を返せばマンネリの匂いがするってこと。
残念なことに、力があって、作りこまれているのはシングル曲だったりする。
なによりもぼくが気になったのは、桑田の詞が少し脇が甘くなったこと。
「心のスイッチ ON」なんて、
これまでの桑田だったら書かなかったフレーズじゃないかな?
ディズニーランドに行って割り込みする奴が許せない…なんてのも、
ちょっと違和感を感じた。


しかし、ドラムの松田弘はいつもながら素晴らしい!
白状しちゃうと、このアルバム、ぼくはずっとドラムを聴いてます。
初回盤では、桑田自身が各曲について
コメントしてるブックレットがついていて、
これは勉強になるんだけど、ぼくの評価は変わらない。


退屈はしないけど、『さくら』の後では物足りない。
次回作に期待。