『Rock And Roll Hero』、『Groovement』、『Largo』

連日、忙しい日が続き、ロクに本も読めない。
最近家で聴いた音楽について、簡単に印象を記しておく。

Rock And Roll Hero』、 桑田佳祐、二〇〇二年、Victor
15年前にサザンの網羅的なベスト盤『すいか』を聴いてからこのかた、
サザン及び桑田に裏切られたことはない。
裏切られるどころか、サザンの恐ろしいところは、
まだまだ成長しているかのようにみえるところだ。

『Young Love』(96年)を聴いたときには、そのあまりの完成度にめまいがした。
98年の『Sakura』は、緊張感こそ薄いものの、
前作の『Young Love』で到達した完成度を余裕で保っており、
サザンが安定期に達したことを物語っていた。
確か、このアルバムの直後に「TSUNAMI」シングルが大ヒットし、
世間的なサザンの再評価が始まったのではなかったか。

このサザンの安定期のことを考えると、いつも連想するのがレッチリだ。
サザンとレッチリは、それぞれ音楽は全く異なるものの、
出す新作が必ず高い完成度を誇り、名実ともに支持されている、
という点において、なぜか僕は類似点を見出してしまう。
(若い頃にかなり無茶をやり、年をとって落ち着いてからは
 若い頃の傾向を円熟させた音楽をやっている、という意味でもそうだ。
 そしてコステロとも…といいたいところだが、
 最近のコステロは、マイナーチェンジを繰り返しながら
 必死に延命を図っているように聴こえてしまうので保留。
 今のコステロを支えているのはそのヴォーカルスタイルだけ
 のように聴こえてしまう)。


ヒットした「TSUNAMI」にしても、この曲は試行錯誤の末に完成した曲というよりは、
桑田が休みの日に適当に書いた曲のように聴こえるのである。
桑田がサザンと違うことをやりたいときには、
サザンオールスターズ」でなく「桑田佳祐」名義でアルバムを発表するらしいが、
このアルバムが全曲ロックンロールで構成されているのもそれの表れだろう。
普通、「ロック」でなく「ロックンロール」で構成されたアルバムは、
全曲聴き通すのはシンドイのだが(僕の年齢にならなおさらだ)、
退屈せずに丸々一枚聴けるのは、やはり桑田のバランス感覚か。


桑田自身、最近の自分の音楽が高い完成度にあることを理解しているのだろう。
TSUNAMI』のヒットにより、2枚組みで編まれた
『バラッド3〜the album of LOVE』の2枚目には、
ほぼ『Young Love』と『Sakura』の曲が収録されている
(しかし、サザンのこのベスト盤ラッシュはどうにかならないのか。
 「若いファンのことを考えての選曲」といいそうだが、
 古いファンの方を大事にしろ、と声を大にして言いたい。
 ビートルズは、ファンにこうした「二度買い」をさせないため、
 シングルで発表した曲はアルバムに入れなかったというのに。)。

仲のいいミュージシャンにも助けられて(実際、その部分は大きい)、
飽きのこないアルバムだ。

ROCK AND ROLL HERO

ROCK AND ROLL HERO


『Groovement』、 マンデイ満ちる、1994、 Kitty Enterprise

歌詞カードはもちろん、ケースも何もないCD剥き出しの状態で
中古店で50円で購入したCD。
内容は「When I with You」を中心としたリミックス集だ。


僕はリミックスの意義を充分認める人間だが、このアルバムはいまひとつ。
世の人々の「リミックス軽視」観を強める「イージー・リミックス」集である。
恐らく、時代の問題もあるのだろう。
クラブ・ミュージックの劣化は早い。
10年でこれほどまでに古臭く聴こえてしまうとは…。
50円だから文句はないが。

GROOVEMENT

GROOVEMENT


『Largo』、 Brad Mehldau、 2002、 Warner
 
先に『art of the trio 4, back at the village vanguard』 を聴いたのがいけなかった。

『Largo』はずっと聴きたかったCDだが、
先に聴いた『art of the trio 4 』 がいまひとつだったので、
聴くのを先送りにしていたのだった。
先に『Largo』 を聴けばよかったと後悔。

編成は原則的にアコースティックのピアノ、ベース、ドラムだが、
全体としての音は、各楽器にミックスの段階で様々なエフェクトをかけたり、
ピアノ弦に粘土を乗せたりと、奇妙なサウンドになっている。
ジャンルという面から考えてみても、4ビートの曲はほとんどない
(もしかしたら皆無かも)。
むしろ8ビートが多い印象だ。


ジョビンの「WAVE」をブレイクビーツでやってたりして面白い。
メルドーは、Radioheadが好きなバンドでしばしばカバーしているらしい。
そこも好きになった。

このアルバムはもう少し聴いて、
そしてそれから『art of the trio』 の方を聴きなおしてみると、
メルドーについてまた新たな発見があるかもしれない。
以後の楽しみとする。 


Largo

Largo