『ソウ(”SAW”)』、2004年、アメリカ、ジェイムズ・ワン監督

『CUBE』meets『SEVEN』というふれこみのこの映画、
残念ながら「出会った」ことにより両者の要素はそれぞれ薄まってしまったようだ。


題名の「SAW」とは、「SEE-SAW-SEEN」の「みた」という意味、
犯人の名前である「JIGSAW」(JIGSAWとは「糸ノコギリ」の意味)、
「ノコギリ」の意味の「SAW」、そして「SEESAW-GAME(シーソー・ゲーム)」の意味がかけられているのだろう。 


羊たちの沈黙』以来定着した、サイコパスな犯人が仕掛ける謎を
主人公が解いていく形式の『SEVEN』の要素と、
与えられた密室状態からなんとかして脱出する方法を考え出す『CUBE』の要素の
二つでこの映画は構成されている。

しかし、犯人探しの要素を導入することにより、
映画は完全な密室を舞台とすることを放棄せざるをえなくなり、
その結果、両者の魅力的な要素が相殺されてしまっている印象を受ける。
特に後半部分の犯人探し・追跡劇は単なるサスペンスとなってしまっているのが残念だ。


そして、何より『SEVEN』に比べて決定的に劣っているのは美的な意匠。
『SAW』では、恐らく客を怖がらせたり、
不快感を触発させるために美術が考えられているのだろうが、そのせいでB級感覚は否めない。
こうしてみると、いかに『SEVEN』が優れたフィルムだったかがわかる。
むしろ、密室状態を前面に押し出し、『CUBE』のように論理を重視して
制作したほうが成功したのではないだろうか
(実は『CUBE』も私はそれほど評価していないのだが、
 完全な密室状態を舞台にして、あれだけの完成度の映画を作り上げた、
 という点は評価している)。


とりあえず103分間は良質なサスペンスとして楽しめるものの、
そこまで大騒ぎするほどの映画ではない、というのが私の印象である。


ただ、監督は恐らく(外見と名前から)アジア系のジェイムズ・ワン、
脚本のリー・ワネルはともにオーストラリア出身の27歳のヴィジュアルクリエイター。
サンダンス映画祭(『π』、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、『メメント』、
 『CUBE』……もここで大いに評価を受けた)で、
このような若い才能が発掘されるのは嬉しいことだ。
この二人の今後の活躍に期待したい。                    

SAW ソウ DTSエディション [DVD]

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