『イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談』、押井守、徳間書店、2004年

文字通り、映画『イノセンス』の制作日記とでも呼ぶべき本である。
前半が随筆、後半が時期の異なる三つの対談で構成されている。
しかし……ここのところ頻繁に押井の映画を観て(パト2のDVDも購入した)、
押井の著作や押井について書かれたものを集中的に読んでいたため、
正直、飽きてしまった。


以下は面白かったところを挙げておこう。

人間は人間についてあまりにも長いこと考えつづけ、
ついに人間について何も語れなくなってしまった。
人間はむしろ傍らにいる動物と語ることを目指すべきだった―
―彼らこそが人間が何者なのかを語ってくれた筈なのに。

自己を客体化したものが人形なのではないか

これこそ、『イノセンス』のテーマだろう。
人形は人間の自己客体化の極北であり、
犬は「広大な無意識」(=「イノセンス」!)を象徴している、と。

主人公の獲得目標が社会化されているならそれは『物語』であり、
あくまで個人の内面におけるそれならそれは『ドラマ』でしかない。
恐らく『ドラマ』なるものは劇映画という過渡的形態の副産物として、
映画を構成するのは『物語』と『世界観』と『キャラクター』であり、
いずれは映画から捨象されるべき要素に過ぎません

レイアウト……近景=キャラクター、中景=世界観、遠景=物語」

前半の随筆はジブリの機関紙に連載していたものらしく、
そのせいか鈴木敏夫宮崎駿への当てこすりのようなものが鼻につく。
後半の対談は養老孟司四谷シモン鈴木敏夫の三人だが、
四谷シモンとの対談は押井が興奮して喋りすぎてしまって話がかみ合っていないし、
鈴木との対談は『イノセンス』のDVDに収録されているものと同じだ。


後は『ユリイカ 2004年4月号』の「特集 押井守」があるが、
これはもう少し時を置いてから読むことにしよう。   

イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談

イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談