『ブルースの歴史』、ポール・オリヴァー/米口胡訳、晶文社、一九七八年。(”The story of the blues”, Paul Oliver, 1969, )


出会いはブックオフで即買い。
しかし読み通すのには長い時間がかかってしまった。
ポール・オリヴァーは名の通ったブルース研究家であるらしく、
ブルースの通史のような内容を期待していたのだが、
予想以上に学術的な内容で読むのに苦労した。


単にブルースマンを列挙し、それぞれの影響関係や裏話、
そして名盤を挙げてブルースファンを喜ばせるのでなく、
アフリカからアフロ・アメリカンが連れて来られるところまで遡って
ブルースの発生・成長を概観する、硬派な本である。
そこが古典として評価される所以なのだろうが、
少々硬質に過ぎるように感じてしまった。

以下、気づいた点を。


まず、原書が書かれたのが1969年だということ。
本書ではブルースがまさに姿を消しつつある当時の状況を憂い、
アフロ・アメリカンの主な音楽がソウルになったことを嘆いているが、
この辺りの時代感覚というものはちょっと理解しにくい。
ジャズについての言及がないのも不思議に思う(意図的なものだろうか?)。
これに関しては、他の研究書などで確認することにする。


次に、叙述の方法に関してだが、
時代背景・社会環境を重視する「社会学的な見地」と、
各ミュージシャンの人となりやその音楽を説明する
「ブルースという音楽そのものの見地」とのバランスが悪いように思われる。
いや、正確にはよすぎるというべきか。

ほぼ半々に、そして坦々と叙述されていくため、
まるで山川の世界史の教科書を読んでいるかのようだ。
思い切ってどちらかに振り切ってしまった方が面白かったのでは、
と思うときがしばしばあった。
もちろん、それこそ世界史の授業のように、
これを教科書として、講師が実際に音楽を流したり、
副教材を配布して説明したりするのならばいい講義になりそうだが、
頭から読んでいくのには忍耐力を要求されるのも事実だ。


つまるところ、この本の価値はブルース研究黎明期の古典的な研究書、
というところにあるのだろう。
さらに別の研究書によって補完していきたい。

ブルースの歴史

ブルースの歴史