『ミーンストリート』、1973年、アメリカ映画、マーチン・スコセッシ監督("Mean Street")

 スコセッシ31歳の時の作品。


 この映画は、スコセッシがデ・ニーロと初めてコンビを組んだ作品であり、
その意味で記念的な作品であるとよく述べられる。
手元の資料に目を落とすと、
確かに、デ・ニーロはこの三年後の76年には、
圧倒的な『タクシー・ドライバー』を皮切りに、
77年の『ニューヨーク・ニューヨーク』、80年の『レイジング・ブル』と
スコセッシの節目の映画には必ず出演しており、
どれもニューヨークを舞台にした名作となっている
(最近はディカプリオがその座を奪いつつあるようだ)。


しかし、僕が観たかったのはデ・ニーロではなく、
主演のハーヴェイ・カイテル32歳の若き姿である。
カイテルはもちろん『タクシー・ドライバー』にも出演しているし、
96年のクロッカーズでは、俳優としてのスコセッシと共演もしている。


若きカイテルは、その後の活躍を連想させる安定した演技で楽しめたが、
やはり僕は年をとってからのカイテルの方が好きだ。
俳優にとって、こう評価されるのは悪いことではないだろう。


ニューヨークのイタリア人街(リトル・イタリー)で
生まれ育ったチャーリー(カイテル)には、
聖職者になろうか映画監督になろうか迷っていた
スコセッシの心情が投影されているらしい。


アッシジの聖フランチェスコに傾倒する、遊びまわっているチャーリーは、
周囲からも敬遠されるほど常軌を逸しているトラブル・メイカーの
ジョニー・ボーイ(デ・ニーロ)を救うことで、
その信仰を自己弁護しているかのようである。


若者のもてあまし気味のエネルギー、
そしてそれをカメラに収める手際のよさに感心する。
手撮りのブレる映像が気にならず、むしろ効果的に使われているのである。
音楽もよい。オールディーズが意図的に頻繁に使われていたが、
特にストーンズの「Jumpin’ Jack Flash」に合わせて
夜のバーで踊るシーンは秀逸だ。


デ・ニーロの演技も後年のキレた演技を予感させるものだ。
ビジュアルとしても、特徴的なあのホクロも存在感を示しており、
笑い皺は既にこの時点で刻まれていた。 


デ・ニーロこそ出ていないものの、
スコセッシは『ラスト・ワルツ』と『ハスラー2』の監督でもあったようだ。
アビエイター』の前に、『ギャング・オブ・ニューヨーク』から観ていきたい。

ミーン・ストリート [DVD]

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