辞典にない意味だからこそ

辞典にない意味だからこそ

 或る菓子工房の広告コピーです。あなただったら空所にどのようなコトバを考えますか。

 

  サバサバした女性が甘い物好きだと

可愛く見えるから、(      )。

 

 少し考え込む方にはヒントを。

 いつも女性客をそっと観察していて、その印象なのかもしれません。あるいは、そのサバサバした女性は同僚でライバルなのかもしれません。そして、彼女を、良い意味で、追い越したいと考えているのでしょう。そして、このコピーライターは女性です。

 

  では答です。

 

サバサバした女性が甘い物好きだと

 可愛く見えるから、ずるい。

 

「ずるい」に、意表を突かれたのではないでしょうか。

「味しいケーキをいっぱいめしあがれ」では単純すぎ、

「どことなくアンバランス」では菓子工房のコピーに不適切です。ところが、「ずるい」で甘い物好きのサバサバした女性に好感を示しています。味方に取り込んでしまいました。

 

やはり、この「ずるい」しか考えられませんね。嫌悪でも妬みでもなく、つまらぬ競争心でもなく、「やられたナ。負けるもんか。よ~し!」と背筋を伸ばす姿が心地よく伝わってきます。コピーライターは流石にことば選びの達人ですね。

甘い物の効果は、脳の活性化、労働意欲・リラックス・安眠の促進がある。そこを狙った「菓子工房」のショップカードに書いてあるコピー。

国語辞典には「ずるい」のこの意味と用例がありません。でも、国語辞典にないから、コピーライターの才能が発揮できるのでしょう。

(『毎日読みたい365日の広告コピー』より)

 

毎日読みたい365日の広告コピー(ライツ社)

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