経済成長、景気などの分析は、きちんとした根拠が必要だ。
このときの藻谷氏の「詳細なデータ」、見てみたいなあ。
「政府などの公表データをもとに」がポイントだと思う。
経済成長 カギは給料アップ
関西スクエア 中之島 クロストーク(3月1日 朝日新聞 朝刊)ゲスト 藻谷浩介さん
政治学者の白井聡さんがホスト役を務める対談・対論イベント「第12回 関西スクエア 中之島クロストーク」(朝日新聞社主催)が2月3日、大阪市北区の中之島フェスティバルタワーであった。エコノミストの藻谷浩介さんをゲストに迎え、日本経済の現状などについて語り合った。
藻谷浩介
(もたに・こうすけ 1964年生まれ。東大法学部卒。日本総研主席研究員。地域振興などをテーマに各地で毎年数百回の講演などを重ねる。著書に「里山資本主義」「デフレの正体」など。)白井聡
(しらい・さとし 1977年生まれ。京都精華大学専任講師。著書に「戦後政治を終わらせる」「永続敗戦論」など。)
GDPほぼ横ばい
議論は、白井さんの「経済成長を追い求める社会からどう脱するか」との問いかけで始まった。
藻谷さんは、政府などの公表データをもとに話を進めた。15〜64歳の日本の生産年齢人口は、1995年の8716万人から15年までに1千万人ほど減少した。「働く世代が12%以上も減ったのに、その間の国内総生産(GDP)はほぼ横ばい。1人あたりのGDPは増加している。日本経済は衰退ではなく、高い巡航高度で横ばいを続けている」と分析した。
高齢化のため、社会保障費の伸びが懸念されているが、藻谷さんによれば、国民1人あたりの医療費は米国よりはるかに低い。「国民皆保険制度のもと、こじらせる前に医療を受けられるから医療費が安くなる。他方で、子育て支援は先進国で最も乏しく、結果として過去40年間で出生は半減した。特に首都圏の出生率が低い。しかし、いま、全国1700の市町村のうち、子育てをしやすい過疎地を中心に240あまりでO〜4歳児が増えている」と指摘した。
高齢化社会に絡み、原子力事業の巨額損失で債務超過に陥った東芝についても言及。「現役世代の減少で民生用電力需要は減っているのに、東芝は原子力事業に力を入れてしまった」。白井さんは「東芝は、手元資金を得るために半導体など優良部門を売る末期的な状態」と語った。
株価が上がっても
安倍政権の経済政策「アベノミクス」についても、藻谷さんは詳細なデータに基づいて検証した。株価の上昇と、個人消費や勤労者の所得の合計が連動していないことを示し、「株でもうけた層が消費しないので、一般国民の生活は向上しない」と述べた。
また、給料の合計にあたる「雇用者報酬」とGDPの経過についても紹介。雇用者報酬は、日経平均株価が史上最高を記録した1989年からバブル崩壊後も増え、97年までに70兆円増の278兆円に上った後は減り、2015年は263兆円にとどまった。GDPも1989年の後、97年までに100兆円増え、その後は横ばい状態が続いていると指摘。「雇用者報酬やGDPの増加が97年で止まったのは生産年齢人口が減少し始めたから」「給料の総額が上がると消費が増えてGDPが増える。人口が減る以上、1人あたりの給料をかなり上げない限り、経済成長はしない。若者や母子家庭のお母さんの収入を増やすのが効果的だが、そうなっていない」と述べ、アベノミクスの不発の理由を分析した。
- 作者: 藻谷浩介/ 山田桂一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/11/16
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る