『ゾウの時間ネズミの時間』、本川達雄、中公新書、一九九二

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

読書メモ。

体表面積の法則は「law」であり、ベルクマンの規則は「rule」である。
ベルクマンのものは、単なる経験則だからルールという。
それに対し前者は数学的な考察から導き出されたものだから、
これは天賦の法則にちがいない。
呼び名で人々がどのようにその発見を評価したかがわかる。

全体のサイズが変わったら、機能や各部分のサイズがどのように変化するだろうか。
この変化の様子を記述するときに、部分を全体のサイズの指数関数として近似して書き表すやり方を、
アロメトリー方式と呼ぶ。
そしてこの指数式をアロメトリー式と呼ぶ。

人間は存在を三次元空間と時間とを用いて認識している。そしてこの際、時間軸は、空間の軸とは独立なものとして取り扱い、それを当然のことだと思っている。そこに突然、動物では時間と空間とは相関すると言われると、おや? と奇異な感じをもたれるかもしれない。しかし、落ち着いて考えてみれば、力学的相似の例のように「相似」という概念を持ち込めば、時間と空間とは、ある関係をもってきてしまうものであろう。だから、そう奇異に感じる必要もない。
相似」ということで一言付け加えておこう。人間は、何らかの相似性をもとにしなければ自然を理解出来ないのではないか、と私は思っている。自然科学とは自然の内にパターン(相似性)を見つけ出す作業ではないだろうか? もしそうだとすれば、時間と空間とは、いつも相関関係をもっていると考えた方が実際的だといえるだろう。
 動物をよく理解するためには、空間と時間と力、この三つに対する感覚がなければならない。