『プレイヤー・ピアノ』、カート・ヴォネガット・ジュニア、ハヤカワ文庫、昭和五〇年

プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF)

プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF)

もはやアメリカ文学の古典と呼んでも問題ない1冊。
村上春樹の隠れたネタ本、ということを聞いたので以前に購入した。
「『吉里吉里人』に似てるな〜」というのが読後の感想。
吉里吉里人』ほどスラップスティックではないものの、
主人公が喜劇的に巻き込まれていくところとか、既視感をおぼえた。
1984』のような管理社会モノだったんだね、勘違いしてました。


いくつか引いておく。

「ソローは、メキシコ戦争につぎこまれる税金を払わなかったかどで投獄された。
彼は戦争に反対だったんだ。エマソンが獄中の彼を見舞いにきて、こうきいた。
『ヘンリー、なぜきみはこんなところに入れられた?』
すると、ソローがいった。
『ラルフ、きみこそ、なぜここへ入らないんだ?』


エリントン箇所。

(サックス演奏を映しているテレビの音を消して、何の曲を演奏しているか当てさせるシーン)
「古い、古い曲だ。<スターダスト>」
「<スターダスト>に十ドル賭けるかい?」
「十ドル賭ける」
「こんどはなんだって、アルフィー?」バーテンがきいた。
 アルフィーはポールのほうに親指をつきたてた。「この兄さん、わりといい線だぜ。
<スターダスト>だっていうんだが、どこでそう思ったか見当はつくね。
なつメロとにらんだとこまではいいけど、残念、曲名がはずれ。
こいつは<ムード・インディゴ>だよ」
青年はポールに同情のまなざしを送った。
「たしかにむずかしいもんなあ」いうと、指をパチンと鳴らした。
バーテンがつまみをひねるのといっしょに、
<ムード・インディゴ>があたりにひびきわたった。