「父として」(ジャコ・パストリアス)、『ジャコ・パストリアスの肖像』より

ジャコとトレイシーは一九七〇年夏に結婚し、
フォート・ローダデイル市内のハリウッド・ブルバードにあるコインランドリーの上の狭苦しいアパートで暮らし始めた。
娘のメリーはその年の十二月九日、ジャコの十九歳の誕生日から八日後に生まれた。
ジャコは父親としての責任を真面目に受けとめていた。
妻と子どもを養っていかなければならないことを、若きベーシストは真剣に考えていたようだ。
グレゴリー(ジャコの弟。パストリアス家次男)は言う。



「メリーが生まれたときのことはとてもよく覚えているよ。
 僕とジャコは病院にいて、産婦人科病棟のガラスごしにメリーを見ていたんだ。
 ジャコが僕の方を向いて、真剣な表情で言った。


『グレゴリー、こんな生活はもう終わりにする。
 これから俺は、この星で一番のベーシストにならなくちゃいけない。
世界に出て行って、ベースでいい暮らしができるように、何かすごいことを始めないと。
一生くだらないバーで、金もロクにもらわずに演奏していくことなんてできない。
俺には、面倒をみなくちゃいけない家族がいるんだ』


とね。」
(一部修正)



今日の朝、父親になった。


ジャコパストリアスの肖像

ジャコパストリアスの肖像