『日出処の天子』、山岸涼子、白泉社

文句なしの名作。
この漫画を読んだことがない人は、一刻も早く読んだ方がいい。


この漫画について、山形浩生が見事な文章を書いてるので、
アドレスを引いておく。
特にこれに付け足すことはない。
というか、ぼくは山形氏のこの文章を読んで、
はじめてこの漫画のすごさがわかった。< http://cruel.org/cut/cut199404.html >


親が買ってきたこの漫画を、
中学生、いや確か小学生の頃にぼくは初めて読んだのだけど、
そのときはまだこの作品の持つ恐ろしさをよく理解できていなかった。
少女漫画特有の「ボーイズラブ」(当時はそんな言葉はなかったけど)で、
舞台が古代日本ってのが面白いな、と思った程度。


恥ずかしい限りだ。


出会ったときにもっとこの漫画を真剣に読んでいれば…。
まあ、真剣に読んでもまだわからなかっただろうけど。
ぼくはこういう漫画が他にも結構あって、
柴門ふみの『PS. 元気です俊平』もその一つ。
この漫画、テレビドラマ化すると聞いて本当にガッカリした。
「トレンディドラマ」の原作にうってつけの柴門ふみ
ネタがないからって安易に『俊平』を取り上げるなんて…。
柴門ふみの最高傑作は『俊平』、というのがぼくの持論だ。
後はプロットも画力も失速しているようにしか見えない
(短編は結構面白い)。
閑話休題


この『日出処の天子』の文庫版、各巻にそれぞれ解説がついてるんだけど、
二巻の氷室冴子、最悪。
六巻の夏目房之介もヒドイ。
夏目は、
「厩戸の国家理念と業の展開をまだ今少し読みたかった」
なんて書いてるけど、
そんなの描かれる必要はない。
むしろ、それが描かれたら蛇足になるんじゃないかな。
さらにひどいのが7巻の水木しげる
明らかにこの漫画を読んでない。
大物に頼めばいいってもんじゃないよ…。
これらの解説がついた形で残っていく、というのはちょっと残念だ。
*1
でも、一巻の荒俣宏と三巻の梅原猛はよかった。
梅原猛って、学生の頃ははっきりいって読む気もしなかったけど、
この漫画のおかげでちょっと興味が出てきた。
『隠された十字架』って、あながち妄想の産物、
トンデモ本の類ってわけでもないのかもしれない。
そのようにも解釈できる、と。
でも、やっぱり学者がそういうことを言っちゃおしまいだと思う。
あ、だから梅原猛の肩書きは「哲学者」なのか。


*1:あと、もともとのコミックに付いていた、オマケ漫画がカットされているのも残念。