No overdubs or repairs done on this album.
I am proud of this album,
because it shows our concept of making music.
Walking on stage with only an electronic beat
as the basic element in a song.
It leaves it all up to us
to create spontaneous music and a good spirit.
I say it’s JAZZ.
Bugge Wesseltoft率いる「New Conception Of Jazz」のライブアルバム、
『LIVE』より。
90年代のジャズを総括し、そして新たな10年間を予言するかのような、
ブッゲ・ヴェッセルトフトのこの言葉を目にしたとき、
私はあまりのカッコよさに文字通り痺れてしまった。
ジャズの定義は様々だ。
「4ビートだったらジャズ」「長いアドリブ・ソロがあればジャズ」。
中には、「ジャズのコード進行だったらジャズ」なんて
同語反復的でほとんど答えになっていないものもある。
だが、そもそもモダンジャズは「これまでにない音楽を創りだそう」という
強い意志から生まれたのではなかったか。
4ビートがジャズを生み出したのではなく、
その当時新しい音楽の創造を求める意志・衝動*1が4ビートを生み出したのだ。
この意志・衝動が、
ケニー・クラークにシンバル・レガートの4つ打ちをさせたのであり、
またパーカーとガレスピーに新しい言語―
―喋り方、とした方が正確だろうか――を発明させた。
ブッゲにビーツを使わせたのも同じ意志・衝動だ。
その意味でいえば、フランク・ザッパはジャズだと言ってしまっても
問題はないだろうし、
最近でいえば私はエゴ・ラッピンよりもオレンジ・ペコーの方に
強くジャズを感じる。
だが、思うに「ジャズとは何か?」という問いは、
「哲学とは何か?」という問いと同じくらい空虚で無意味な問いかけだ。
私は高校から大学にかけてこの2つのことを考え、
ほとんど何の手応えもないままに時を過ごしてしまったが、
それも当然の帰結だ。
問いの立て方が間違っている。
無意味であることを承知の上でジャズを定義するならば、
「伝統を吟味・批判し、これを乗り越えていく音楽」、
「常に『ジャズ』という言葉が示す音楽について考え続ける音楽」
ということになるだろう。
しかし、これはほとんど「モダニズム」と同義であり、
だからこそ、ジャズは自ら「モダンジャズ」と名乗ったのである*2。
そして、もちろんブッゲのこの言葉も、
2003年の時点でのブッゲの視点からの定義に他ならないのであって、
この言葉もまた批判され、乗り越えられていく運命にある。
それがジャズの歴史であり、我々に要求されていることは
その瞬間を見過ごさずに(聴き逃さずに)いることだ。
その瞬間に立ち会うまでは、
このアルバムの#1(”Live in Amiens”)や
#2(”Live in cologne”)を聴いて、ジャズの衝動に身を任せよう。
繊細でいながらファンキーなビーツと、
ブッゲの知的なエレピのソロが交じり合うステージは、
まさに”Jazz is the teacher, Funk is the preacher”なのだった。
- アーティスト: Bugge Wesseltoft
- 出版社/メーカー: Universal Import
- 発売日: 2003/07/28
- メディア: CD
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