『オーシャンズ 12』、スティーブン・ソダーバーグ監督


以前に書いたものだが、ソダーバーグについて記しておきたいので、
ここにもアップしておく。


わざわざ映画館にまで行って観たくはなかったのだが、友人に強力に押し切られる形で足を運ぶことになる。
僕は『レイ』を観たかったのだが。


オーシャンズ〜』シリーズは、特に観たい映画ではなく、というよりも下手をすると僕は一生観ない映画なのだが、実は密かに興味を抱いていた映画ではある。

というのも、この監督、スティーブン・ソダーバーグは、
僕が中学生の頃の『セックスと嘘とビデオテープ』では、
均質化されるアメリカ郊外における人々のディスコミュニケーション(嘘)という主題を、
性生活(セックス)とメディア(ビデオテープ)に象徴させて表現することに成功していたし、


記憶に新しい『トラフィック』では、
北と南に跨るアメリカ大陸の麻薬問題を斬新な(あざとい、ともいえるが)映像によって提示させてきた社会派の監督だったからだ。


そのような監督が、なぜ『オーシャンズ〜』のような娯楽映画を今撮る必要があるのか、という素朴な疑問が常に胸にはあった。



実際に観にいって、まず驚いたのは観客の入り。
普段僕が観る映画は圧倒的に空席が多く、下手すると一割くらいしか入っていないのに、この映画はほぼ満席。
僕が普段観る映画がいかに少数派であるかを痛感するとともに、
ハリウッド映画の影響力ということについて考えさせられた。


『スティング』的、『ルパン』的な騙し騙されの娯楽映画としては脚本も練れていないし、なにより筋が分かりにくい
(これは前作を観ていない僕だけか?)。
また、この手の娯楽映画ならば要求されてしかるべき、
音楽や映像の斬新さといったものも特になかった。
(例えば、『レザボア・ドッグズ』やガイ・リッチーの『ロック、 ストック〜』のような!)


もっともイタイところは、
恐らく監督自身がこれらをカッコいいものとして作っていると思われる所だ。
音楽は悪くは無いけど、ソウル・ファンクの文法を逸脱したものではないし、
手持ちで撮影されたであろう映像はライブ感をもたらすどころかカメラ酔いを引き起こすだけ。


結果として、ハリウッドスターの仲間内ホームパーティを撮影したようなこのフィルム、ハリウッドスターに特に興味の無い人間は一体どこを楽しめばいいのか?
僕はしらけてしまった。
評価できるところは小ネタくらいか。
ところどころにちりばめられた小ネタは面白かった。


結局、ソダーバーグは何故、
この時期にこのような映画を撮ったのか?
という疑問には答えが出なかった。
次の社会派の映画を撮るための資金稼ぎ面での戦略だったのだろうか?
それが良心的な僕の答えである。


しかし、実はこの映画を観たことでソダーバーグへの僕の関心が高まった。
で、ソダーバーグのブランクについて考えるため、
以後数日間立て続けにソダーバーグの映画を観ることになるのだった。
その結果、面白いことがわかった……。
続きは明日へ。


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