左利きを「サウスポー」と言う由来、その語源には諸説あるようですが…。
左利き
手は、手と反対側の脳が支配する。左利きの人は右脳が活動しているのだ。左利きの人は9人に1人程度だという。
子供の左手書きは早いうちに直すのが賢明。東アジアは書字中心言語。文字の規範が右手書きでできているため、左手ではとても書きづらい。
と説く書家もいる。子規も幼少期に右利きに矯正されたように、日本人は早い時期に右利きに直そうとするので、外国人に比べて左利きが少ないようにみえるが、左利きになるかどうかは民族で変わることはないらしい。なぜ左利きとなるのかよく分からないし、遺伝子も発見されていないという。
ある通販のカタログでは日本剃刀が5500円、 左利き用が9000円。右利きの人は道を歩く時右手が自由に使えるように荷物は左手に持つ。だから、駅の自動改札機は多数派の右利き用にできているので左利きの人は使いにくい。実際に右手に荷物を持って改札機を通ってみたり、あちこち歩いてみれば、いかに不自由かが体験できる。扇子も左手に握ると要の突起が親指の付け根としっくり合わない。
左利きの人は少数派だから不自由はあるだろうが、慣れてしまえばという場面もあるはず。そういうわたしは右利きだが、パソコンのマウスは左手でも使える。はじめは画面からポインタが飛び出して苦労したが、練習すればすぐに、右手とまったく同じように使える。
左利きには「酒が強い人」の意味もある。これは大工が鑿(のみ)を持つのが左手なので、語呂を合わせて「飲み手」。ここから「左が利く、左が強い、左が過ぎる」などの「左」は「酒」と読み替える。
最後に江戸川柳から。
古着屋が袖口で知る左きき
左の袖口の方が擦り切れて痛みがひどいから、この着物の持ち主は左利きだったのだな、とふと思いを馳せるただそれだけをいっている。
左利きと聞いて、わたしが連想することが2つあります。
一つは、音楽における左利きの特異性について。
具体的には、ポール・マッカートニーとジミ・ヘンドリクスです。
この2人はロックの世界の革新者で、20世紀の音楽を大きく前進させた2人ですが、2人とも左利き。ロックの場合、ギターとベースの誰かが左利きだと、ネックが反対側に伸びることになり、観音開きになるので、絵が華やかになります。まあ、逆に統一感がなくて雑然とする、とも言えますが、ポールの場合、それもビートルズらしいといえるでしょう。ビートルズは優等生集団なんかではなく、性格的にも音楽的にも小賢しい悪ガキグループである、というのが中山康樹先生の見立てですが、そのイメージにピッタリですよ。特にポールなんか、自分が左利きであることを誇らしく思っていたんじゃないですかね、シメシメ、俺だけ逆方向で目立つぞ、と。
ポール・マッカートニーは左利き。
…いつも思うことですが、カール・ヘフナーのバイオリン・ベースはどうかと思います。
一方で、ジミ・ヘンドリクスの場合は音楽性に直結してます。
ポールのベースは左利き用。
構える向きが反対になるので、高音と低音の弦を逆に張り替えているんですね。
ところが、ジミヘンは大胆にも右利き用のギターをそのまま使っちゃってます。
当たり前のことですが、これは弾きにくい。
そして、もろもろの教本やコード本に書いてあることがそのまま当てはまらないので、自分で試行錯誤して、やりやすいようにカスタマイズしなければならない。
でも、その結果として「どこか普通とは違う」音楽が生まれることになりました。
こういうところが、ジミヘンが天才と言われるゆえんなんですよね。
ジミ・ヘンドリクスかく語りき (SPACE SHOWER BOOks)
- 作者:スティーブン・ロビー
- 出版社/メーカー: スペースシャワーネットワーク
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 単行本
同様に、左利きのミュージシャン、というのも結構います。
有名どころを挙げてみると、
ビル・エヴァンス、エロール・ガーナー、マッコイ・タイナ-、ウィントン・マルサリス、ボブ・ディラン、パガニーニ、ベートーベン、ラフマニノフ、ショパン、モーツァルト、シューマン、プロコフィエフ、J.S.バッハ、ラヴェル、ドビュッシー、グレン・グールド。*1
これはこれで、それぞれ一考に値するテーマですが、それはまた別の機会に。
さて、もう一つの連想することとは、左利きの「9人に1人」という割合。
これ、日本人のAB型の割合、そしてLGBTの人の割合に近い、とよく言われてますよね。わたしは、高校こそ男子校でしたが、これまでの人生でLGBTの方とお近づきになる機会は多くありませんでした。ですが、この割合のことを考えると、それはおそらくわたしが知らないだけで、LGBTの方は何人もいた、ということなんですよね、きっと。だって左利きやAB型の友人は何人もいますから。
LGBTの方への理解を深めるのに、有名人によるカミングアウトも効果がありますが、このような直感的にわかる具体的な数字も有用です。少なくとも、わたしはこの数字を聞いてから考えが変わりましたよ。