この漫才って、ダウンタウンのものみたいですよ。
カモシカのような脚
漫才でこんなのがありました。
「オレの彼女はカモシカのような脚してるで」
「えー! 脚がカモシカ! けったいやなー」
「アホかお前は。どつくでー」
「そやけど、お前のカノジョ、脚んとこカモシカになってんやろ」
正確には「オレの彼女の脚はカモシカの脚のようなすらりとした脚だ」です。このような例はいくつもあります。
伊良部がドラエモンのような指で、ボタン操作に熱中している。
父親がポパイのような太い腕でアイロンをかける。
足が象さんのように腫れた。
(投稿 仁賀孝子 京都新聞)
人なつっこい笑顔とバンビのような手足が印象的だ。
(『アエラ』2005/9/26)
なかにはイメージしにくいものもあります。
及川君は二十八歳だというけど、大学生ぐらいに見える。カモシカのような腰とレモンのような首すじをしている。
(筒井康隆『肥満考』角川文庫)
「レモンのような首すじ」がイメージできますか。コンテクストからはほめているのでしょうが。
分かりやすかろうが、分かりにくかろうが、「カモシカの脚のような脚」と言わずに、「カモシカのような脚」というのが慣用です。言語学では次のように説明されます。
細部を言語化するとかえって情報処理上のノイズとなります。
(『はじめての認知言語学』 吉村公宏 )
なるほど「ノイズ」というのですね。全部を正確に言ってしまうと、「カモシカの脚のような脚」ではくどい。「くどい」のが嫌われるのは、親子、恋人同士、特に夫婦、などどこでも同じ。「言わずもがな」は言語の経済学とも言えます。
ところで、「カモシカの脚」って、実はそんなにスラリとしてないらしいですよ。
山岳地帯を生き抜くためにゴツゴツしてるとか。