カモシカのような脚

f:id:Auggie:20191205050117p:plain

 

この漫才って、ダウンタウンのものみたいですよ。

 

カモシカのような脚

漫才でこんなのがありました。

「オレの彼女はカモシカのような脚してるで」
「えー! 脚がカモシカ! けったいやなー」
「アホかお前は。どつくでー」
「そやけど、お前のカノジョ、脚んとこカモシカになってんやろ」

 

正確には「オレの彼女の脚はカモシカの脚のようなすらりとした脚だ」です。このような例はいくつもあります。

 

伊良部がドラエモンのような指で、ボタン操作に熱中している。

奥田英朗『フレンズ』文芸春秋社

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール (文春文庫)

 

 

 

父親がポパイのような太い腕でアイロンをかける。

川本三郎『続々・映画の昭和雑貨店』小学館 )

続々・映画の昭和雑貨店 (ショトル・ライブラリー)

続々・映画の昭和雑貨店 (ショトル・ライブラリー)

 

 

足が象さんのように腫れた。

(投稿 仁賀孝子 京都新聞) 

 

人なつっこい笑顔とバンビのような手足が印象的だ。

(『アエラ』2005/9/26)

AERA (アエラ) 2019年 12/2 増大号【表紙:生田絵梨花 】 [雑誌]

AERA (アエラ) 2019年 12/2 増大号【表紙:生田絵梨花 】 [雑誌]

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 雑誌
 

 

なかにはイメージしにくいものもあります。

 

及川君は二十八歳だというけど、大学生ぐらいに見える。カモシカのような腰とレモンのような首すじをしている。

筒井康隆『肥満考』角川文庫)

くさり ホラー短篇集 (角川文庫)

くさり ホラー短篇集 (角川文庫)

 

 

 

「レモンのような首すじ」がイメージできますか。コンテクストからはほめているのでしょうが。

  分かりやすかろうが、分かりにくかろうが、「カモシカの脚のような脚」と言わずに、「カモシカのような脚」というのが慣用です。言語学では次のように説明されます。

細部を言語化するとかえって情報処理上のノイズとなります。

(『はじめての認知言語学』 吉村公宏 )

はじめての認知言語学

はじめての認知言語学

  • 作者:吉村 公宏
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2004/12/01
  • メディア: 単行本
 

 

なるほど「ノイズ」というのですね。全部を正確に言ってしまうと、「カモシカの脚のような脚」ではくどい。「くどい」のが嫌われるのは、親子、恋人同士、特に夫婦、などどこでも同じ。「言わずもがな」は言語の経済学とも言えます。

 

ところで、「カモシカの脚」って、実はそんなにスラリとしてないらしいですよ。

山岳地帯を生き抜くためにゴツゴツしてるとか。