『ランド・オブ・ザ・デッド』、ジョージ・A・ロメロ、2005年

友人のtakaoくんが『ランド・オブ・ザ・デッド』を観て、
いたく感心したらしい。
それで、町山智浩氏のブログの過去のページを教えてくれた。
で、ぼくも早速読んだんだけど、
あまりに面白かったので以下に引いておく。


元ネタはid:TomoMachi さんの2005年6月17日・18日の記事。

祝 ロメロ復活!
ランド・オブ・ザ・デッド』は傑作だった!

ハードコアパンク仕上げのリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』、
コメディ版の『ショーン・オブ・ザ・デッド』の大ヒットに対して
ロメロ御大は本家元祖家元の本格派ゾンビ映画を見せてくれた!
最近の映画のチャカチャカした編集と違って
残虐シーンもしっかり見せてくれる。


ゾンビが人間の口に手を突っ込んで内臓を引きずり出す!
目玉をほじくってポリポリ噛み砕く!
へそをピアスごと食いちぎる!
マシンガンの掃射でゾンビの首を切断!
神経と血管だけ残して首をほとんど切断されたゾンビが襲ってくる!
それに舞台がピッツバーグだから、『ゾンビ』で殺された
暴走族のトム・サビーニがゾンビになって鉈をふるいまくるぞ!


舞台はピッツバーグ
二つの川に挟まれたピッツバーグダウンタウンは、
もう一方に壁を築いて、ゾンビから隔離された「島」になっていた。


そこに君臨するのは武力、水、食料をいち早く独占した金持ちたちで、
彼らはフィドラーズ・オブ・グリーンと呼ばれる
高層ビルで優雅に暮らしていた。
それ以外の人々はビルの下のスラムで貧しく暮らし、
生活のためには軍隊に入るしかなかった。
軍隊の役目は島をゾンビから守ることと、
島の外に出てゾンビを蹴散らして物資を強奪してくることだ。


軍隊の武器はロケット砲やバルカン砲で武装した
巨大な装甲車「デッド・リコニング」号だった。
しかし兵隊の一人、チョロ(ジョン・レグイザモ)は
いくら働いても支配階級に入れない現実に怒り、
デッド・リコニングを奪ってテロリストとなり、
ロケット砲でフィドラーズ・タワーを攻撃すると脅迫した。
島の支配者カウフマン(デニス・ホッパー)は、
チョロのライバル、ライリーを雇って、テロリスト狩りを命じた。


いっぽうゾンビの一人、ビッグダディは「目覚めた」。
ダディは自分たちを虫けらのように扱う
「島」の住人たちに対して「決起」し、
ゾンビを率いて「島」に押し寄せていた!...


...このストーリーを読めば、わかる人はわかると思うが、
今回は今まで以上に政治的メッセージがわかりやすく直接的だ。
ロメロは、一作目はベトナム戦争と人種暴動、
二作目は消費社会、
三作目はレーガン政権の右傾化を反映したと言っている。
つまり、どれもその映画が製作された当時のアメリカの状況を
戯画化したものなのだと。
で、今回は、「島」に今のアメリカが象徴されているのだ。

ジョージ・A・ロメロに会った。
以下は彼の話のダイジェスト。
インタビュー全文は後ほど雑誌その他に発表します。


「私のゾンビは進化している。
 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』では
 ショベルを使うくらいだったが、
 『ドーン・オブ・ザ・デッド』ではライフルを拾って構える。
 『デイ・オブ・ザ・デッド死霊のえじき)』では
 拳銃をちゃんと撃てるようになる。
 そして今度の『ランド・オブ・ザ・デッド』では、さらに進化する。
 実は、私のゾンビ映画は、『革命』についての映画だからだ」


ロメロははっきりと言う。


「私は、最初の『ナイト〜』を、
 60年代カウンターカルチャーの革命が挫折したことへの
 苛立ちから作った。


 60年代、若者たちがベトナム戦争に反対し、
 黒人たちが人種差別に反対して
 アメリカのエスタブリッシュメントに対して
 反乱を起こしたが敗北してしまった。
 『ナイト〜』のゾンビたちは敗れ去った革命の亡霊なんだ。


 次の『ドーン〜(ゾンビ)』のゾンビが象徴するものは違う。
 彼らは消費社会のなかでCMに洗脳されたアメリカ人みんなだ。
 彼らは何も考えずに意味もなく毎週ショッピングモールに集まり、
 必要もないものを買いまくる。
 いくら消費しても飽きることをしらない。
 我々はどんどん、何も考えずに
 消費するだけのゾンビになっていくんだ。


 80年代の『デイ〜(死霊のえじき)』は
 レーガン政権の対外強攻政策で右傾化するアメリカだ。
 政府は軍事費を増大させ、戦争を煽るが、その一方で経済は破綻し、
 ホームレスが爆発的に増加した。
 それを、ゾンビに囲まれた地下基地と
 それを支配する軍人たちに象徴させた。


 そして、今回、私が作った『ランド・オブ・ザ・デッド』の
 「人間たちの島」には9:11テロ以降のアメリカを象徴させている。
 機関銃を載せたジープに乗った兵隊たちが
 ゾンビの町をパトロールする場面は、
 誰が見てもイラクをパトロールする米兵に見えるだろう。
 金持ちたちが住む高層ビルは世界貿易センターのイメージだ。
 また、そのビルの下で貧しく暮らす人々はブッシュの金持ち優遇政策と、
 何年も続く不況で苦しむアメリカの労働者階級だ。


 「島」を支配するデニス・ホッパー
 「わしに味方しない奴は皆、敵だ」
 「テロリストには決して屈しない」
 「私は責任を果たす」と言う。
 そのセリフはブッシュの演説のパロディだが、
 ホッパーの癇癪もちみたいな演技は
 ラムズフェルド国防長官をマネしている。


 ホッパーは共和党支持者でブッシュを支援してるんだけど、
 プロだし、ユーモアのセンスがあるから、
 この役を喜んで演じてくれたよ。


 そして、高層ビルを爆破しようとするテロリストが「島」を脅迫する。
 主人公はホッパーに雇われて、テロリスト狩りに行かされる。
 彼はホッパーの軍事独裁政権の言いなりにはなりたくないが、
 ビルが崩壊すれば普通の人々も巻き込まれるから
 テロリストと戦わなければならない。
 この主人公は右翼的なブッシュ政権とテロの板ばさみになって、
 仕方がなく戦争に行って犠牲者を出し続ける普通のアメリカ人そのものだ」


ロメロに話を聞いたこの日、アメリカの下院議員で
やっとイラクからの撤退を求める決議案が提出されることになった。
決議案には共和党のウォルター・ジョーンズ議員も参加している。
南部出身のジョーンズ議員は、戦争が始まる前には、
戦争に反対したフランスを非難して、
議会食堂の「フレンチフライ」を「フリーダムフライ」と
言い換えようと言い出したほどタカ派だったが、
アメリカ兵が今までに千七百人も死んでいることに
やっと危機感を抱き始めたという。


調査会社ギャラップの世論調査では
イラクから撤退すべきだ」と考えるアメリカ人が6割を超えた。
しかし、今年2月の調査では「撤退を支持する」アメリカ人は
49%しかいなかったのだ。


ジョーンズ議員は
イラクには大量破壊兵器は存在しなかった。
この戦争に意味はない」と言っている。


あんたら、遅すぎるよ! 
あと8ヶ月早く気づいてればブッシュ再選はなかったかもしれないのに!

ランド・オブ・ザ・デッド』、めちゃめちゃ面白そうじゃないか!
早速借りてきます。